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日経エンタテイメント2006年12月号No.117 飯島愛「お友だちになりたい!」最終回ゲスト 富野由悠季:シャア専用ブログ
■日経エンタテイメント2006年12月号No.117 飯島愛「お友だちになりたい!」最終回ゲスト 富野由悠季
感動や名セリフを生んだ「ガンダム」はすごい!
飯島 本当は2回出てもらう(03年1月号で登場)のはダメなんでしょうけど、どうしてもお会いしたくて、お願いしちゃいました。
富野 光栄です。
飯島 前回お会いしたとき、『キングゲイナー』のタイミングで、ロシアの地図をを出して解説してくれたのを覚えていますか?
富野 覚えていますよ。
飯島 そのときに私が、髪の毛を2つ分けにしているアデットさんのことを「髪は下ろしたほうがいいですよ」と言ったんですが、アニメではその後、髪の毛が下りていたんですけど、これは偶然?
富野 偶然かな。
飯島 私ちょっとうれしかったんですけど、偶然ですか。残念。
富野 だけど、全部が全部偶然じゃない。僕は、一般的に女性から好かれるキャラクターを手に入れたいと思いながらできないから、アデットの件でも「誰かがああいうことを言っていたな」というのを、飯島さんのことはすっ飛んでいたけど、下ろしたんですよ。男の目線のアニメは嫌いなんで、そういう気のつけ方はしますよ。そして僕の年で、今の20代、30代の男の子が描く女の子が好きだったら、おかしいじゃないですか。
飯島 好きでもいいと思いますけど。どう違いますか、ご自身と今の若い子たちの感性と。
富野 街中でよく見かける、へそ出しファッションとか、とにかくわからない。出してもいいような人は、そんなに多くないのに、お前がやるか、というのが目の前を歩いていると…。
飯島 けっちゃってください(笑)。
富野 そしたらセクハラだと言われるし。奥さんやここ(サンライズ)の青少年によく「富野さん、それセクハラですよ」って言われるんです。
飯島 何をやっているんですか。
富野 ちょっとだけ、こうやったり(腕を触る)。
飯島 お金を払ってくだされば、オーケーですね(笑)。
富野 みんなに優しくというと、こうなるんですよ。そうすると、セクハラになるらしい。だから今、めざしていることがあるんですよ。セクハラでないように触る。そういう高潔な男でありたいと。
何百万人に伝えたい
飯島 どうして今日はエロい話から始まるんですか。
富野 下ネタじゃなくて、志の話をしているわけ、男と女の。
飯島 といいながらも、毎日、奥様に「愛しているよ」とか言ってるんじゃないですか?
富野 そういうルーティンワークは嫌です。ルーティンでない言い方で、例えば「今日は晴れて気持ちがいいね、お前と一緒だからそう思えるのであって、お前がいなかったら青空も灰色に見えるだろうね」とか。これはセクハラ?
飯島 奥様にならいいと思います。
富野 それをあまねく100万人に伝わるようにしたいんです。それをめざして頑張っています。
飯島 何がしたいんですか。すごく失礼な言い方ですが、最後の一花咲かせるぞ、男として、みたいになっちゃっているんですか?
富野 それは意識の中にビシッとありますね。要するに自分の分身、意識を何百万人に伝えたい。作品を作るときに思うのは、そこなんですよ。100万人の人に、その言葉、フィーリングだったらわかる、とか了解してほしいというのがありますね。
飯島 『ガンダム』でもうすでに100万人はゲットしていますよ。
富野 100万人のご婦人はまだ触っていいよとは言ってくれていない。そこが問題かな。僕がある意味自分でも欲が深いな、と思うのは、自分が好きなパターンとか、女性のタイプはないんです。全部好きになりたい。
飯島 いいことじゃないですか。すごいブサイクを呼んで来ても、好きでいてくださいね。
富野 そしたらその子を美しくできるだけの力を自分が持ちたいんです。そういうものを目指しているから、万人にあまねくなんです。だけど、『ガンダム』を30年近くやらせてもらって悔しいのが、そういうふうに自分が思っていることが人に伝わらないということがわかったこと。つまり、他人が『ガンダム』を受けたときに、アレンジしてくれると、別のところに行くわけです。
飯島 『ガンダムSEED』(以下、『SEED』)とかですか?
富野 例えばそれ。『SEED』みたいなキャラクターを、僕はいいとは思えないけど、好きにならなくちゃいけないと思ってもいます。
飯島 『SEED』からファーストに入ったファンもいますよね。
富野 そうなんです。だから、その次に考えるのは時代性ですね。だいたい12年周期、つまり干支の12年で時代が戻ると言われるけど、現実的には20年くらいですね。20年で時代ががらっと変わり、その時代をつかまえていくときに、入り口として『SEED』的なキャラクターがあったほうがいいんだろうと思うようになりました。そうすると今の時代に伝えるためのキャラクター性が好みに合わない自分は、かなり欠陥人間なんじゃないのかなと思うことも出てくる。その部分を自分の中でどう消化すすればいいのか迷っているんです。
飯島 わかります、それは。
富野 さっきも言ったけど、へそ出しは嫌いだと言いながら、好きと思わなくちゃいけないと思う。重要なのはそのバランスを自分の中でどう取り入れるかなんです。取り入れて、次の作品に吐き出すことができるだろうかと、年を取れば取るほど一生懸命になります。それで今度は、年を取って初めてわかる大問題に当たるわけ。
飯島 というと?
富野 「若い人や今の時代がわかる」とうかつに言うと、これは若い人に迎合することになる。その堕落もよくない。偉ぶるのもだめ、へりくだるのもだめ。じゃあ、どうするんだ。そして、こちらの発言や表現を拒否されることになるから、嫌われてもいけないんです。じゃあ、若い人に好かれるかとはどういうことかというと、受け入れてもらえるような表現をこちらがしなきゃいけないということなんですね。
飯島 一番難しいことですよね。
当時はみんな若かった
富野 今、ある小説の書き直しをやっていて、言葉遣いを優しく流し込みたいと思いながら表現できない自分がいる。毎日その問題に突き当たっているんです。
飯島 ハートですよ、最後は。
富野 その若さでそういうことが言えるって、えらいですね。
飯島 いえいえ。だけど、著名人の言葉は簡潔で、すべてを含んでいるでしょう。『ガンダム』の名セリフもそうです。そういう意味でもやっぱり『ガンダム』はすごいですよ。さっきもサンライズさんの玄関口でザクを見て、もう興奮状態(笑)。
富野 何で、あんなのごときで。
飯島 ごとき! 何て失礼なことを言うの。失礼ですよ、本当に。『ガンダム』に謝ってください。
富野 飯島さんは『ガンダム』のどこに一番ひかれたんですか。
飯島 全部ですね。世界観が好きでした。自分に足りないものを持っている人にあこがれたり、嫌いなキャラクターに自分の弱いところを重ねたりとか。また、ホワイトベースのみんな、若いですしね。私、大人になってからも泣きながら休みの日とか見ていましたよ。
富野 僕も、去年の夏ごろにファーストガンダムの映画版をNHKのBSでオンエアしたときに見ていて、驚いたことがあるんです。「お前たちはみんな若かったのね」という感情が起こって、架空の人物たちが若いときを見てニコニコしていしまう自分にびっくりした。
飯島 親心みたいなものですか。
富野 アニメじゃない感覚で、あんな映画を見たのは初めてだった。これは自分が作ったんだというのは後で来たことで、これを作ることができた自分は素敵だなと思った。そう思えるからこそ、なぜ今、できないという悔しさは壮絶なものです。これも一般的に言われていることなんだけど、処女作を乗り越えられる作家はとにかく少ないというのは、本当にそうんですよ。本当に悔しい。
飯島 処女作が当たり過ぎちゃったというのが、残念ですね。
富野 それは笑い事じゃないの、本当に。
飯島 喜怒哀楽があるから作品を描けると思います。
富野 その言葉を信じよう。
飯島 でも、プレッシャーを感じずに。
富野 この4、5年、がんがん感じて、いちいち打ちのめされてきたから、それは感じないです。
キャリアが邪魔してくる
飯島 ここまで心を開いてお話してくださるのはうれしいですけど。ただ、『ガンダム』という作品は、大きいですよね、本当に。
富野 死ぬまでに、もう1つ、そういう作品ををやりたい。これは欲なんだけれども、だけど、その欲が、やっぱり100万人のお姉ちゃんのおしりを触りたいということにつながるんですよ。
飯島 じゃあ、そういうのを作ればいいじゃないですか。
富野 1、2本の企画を見つけているけども、『ガンダム』の富野がそれを撮っていいかをいわれると、何でそこに行くんだって。キャリアが邪魔してきますね。
結局、監督とか原作者とか物語を作る人が「これだ」と思って、主張が見えている作品でないと時代を取れないんだろうということもわかる。けれど、やはり100万人をこっちに向けさせなくてはいけないから、自分の好きというところにポンと出すだけではだめなんですよ。そのスキルは、いったいどういうものなんだろうかということは本当に考えます。
日本にはジブリの宮崎駿がいて10年以上一定の質感で作っている。宮崎駿でさえやっているんだから、できないわけではないはずだと。「さえ」という言い方がちょっと問題かもしれないけど、それでいいんです。僕は彼のキャリアを知っているけど、こういうふうに進む思考回路を持っている人じゃなかった。目指したところが全然違う人が、大衆にヒットできたんだから、自分にそれができないわけがないと思いたい。
飯島 鈴木敏夫さんというやり手のプロデューサーもいますからね。
富野 彼が『アニメージュ』の編集長だったころを知っているから、僕には残念なことに、なぜすごくなったのかわからない。
飯島 富野監督は、全部自分で、原作から自分の産み落としたものを、色を付けて育てていきたいんですよね、方針として。
富野 そういう意味では自信を持っていいかなと思うんだけども、やっぱり宮崎さんには負けているというのはある。
飯島 天才は天才に嫉妬するという言葉がありますね。嫉妬するのは天才同士だけだって。
富野 でも、これは宮崎さんに失礼なんだけど、宮崎さんレベルに嫉妬なんかしている暇はないなというのがありますね。映画人として嫉妬する人って、もっと別のところにいるから。
飯島 その勢いでやってくださいよ。ちなみにどなたですか。
富野 ビリー・ワイルダーとか、スタンリー・キューブリック。
飯島 それは素敵ですよね。富野監督って、とても素敵でいらっしゃいますね。
富野 そう言われるのはとってもうれしいし、僕もバカだなと思うのは、この年で飯島さんみたいな人にそんなことを言われて、喜んでいる自分(笑)。うん、だから自分の感じ方はきっと間違ってないはずだから、本当に自信を持って次のもんを作っていく自分でありたい。死ぬまで何かができる自分を維持していきたいと思いますね。
飯島 そうですよ。今日はありがとうございました。
連載をまとめた単行本が12/6に発売。
関連?
裏トミノブログ まだセーフなのでしょうか!!?
http://ura-tomino.at.webry.info/200609/article_5.html
ここで触れられていた対談の事だったのかしら。
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