シャア専用ブログ

通常の3倍

04/02/02-17:25

小説現代 2002年2月号「徹底対談 今、戦争を物語るということ」:3倍

失敗スレが235も続いた原因の不幸四葉を処断part62より。

■戦争を語る言葉が無い

富野
 今、加藤陽子さんのようにニュートラルな視点を持った戦争論というのを我々がほとんどしていないために、結局みんな言葉が足りなくなって、何を喋っていいのかもわからなくなっていると感じます。逆にいうと、戦争論と言った瞬間に、何を聞いたらいいかわからない、というのが、戦後我々が身につけてしまった振舞い方なのかなって思いましたね。民主主義の時代と言われながら、戦後教育でわがままでいいってことを教わったらしい。自分の理解できる価値観や主義主張を、中高、大学生で掴まえた途端、結局それだけにすがって走っちゃう部分があるんじゃないかということです。そしてそれを、戦後教育を受けた人間は、「偏向」とは言わないわけです。

福井
 「個性」という言い方をする。

富野
 そう。個性、アイデンティティ、その次に繋がるのは、エゴイズムなんですよね。エゴをニュートラルに置くのか、個性として置くのかっていうことを、我々は本当に自分自身で意識しているのか、律しているのかと思います。まして自分より若い世代に、個性、エゴイズムの問題をきちっとコントロールしなさいよという教育なり言葉を持っていたのかというところまで来ちゃってて、その上で「戦争」がテーマになってくると……。

福井
 極端で安易な国粋論、現実には応用不能で、ひょっとしたら自堕落を続けるための言い訳ではないかと思えるようなリベラル論まで出る。右も左も「個性」とパッケージングされて、きちんと検証もされずにマスコミが垂れ流すという事態になってくる。特に今は、戦後半世紀の揺り戻しで、「やっぱり徴兵とかやったほうがいいんだよね」なんて発言が結構耳につきやすくなってます。これをファッションのように受け入れてしまう風潮は問題ですし、
けしからんと目くじらを立てたり黙殺したりして、実のある反証ができない
軟弱なリベラルというのもタチが悪いですよね。
 そういった時に、戦後半世紀のあり方を全否定したり全肯定したりするのではなく、それを基に新しい認識を獲得しよう再構築しようというスタンスで話のできる人間は本当に少ないように思います。

■9.11以降の認識論

富野
 だけど難しいんだよね。アニメに寄り添って話をしたほうがきっと楽かもしれないんだけど、そんなナンセンスな話を『小説現代』でしても仕方がないわけだし(笑)。ただ、ただ、僕は、ロボットアニメを二十何年すっとやっていたおかげで、嫌でも戦争の事を考えていたんで、どの辺りに問題点があるのかは本能的にかなりわかっているつもりです。
 いまの戦争というのは、かつての戦争とは、性質が根本的に違ってきています。現在の世界経済の状態も、僕は、広い意味では戦争だと思っているんですが、日本語で「戦争」といえば、国家対国家の、武力行使をするフィールドがあった上での戦闘のことを指すでしょ。そうなると、9.11以降明晰になってきたのは、もはや国家間の戦争という概念はあり得ないんだというふうに、なぜ我々はスイッチングできないんだろうか、という問題なんです。『∀ガンダム』('99〜'00年TV放映)の企画を始めたときに僕が一番意識したのはそこで、国家間戦争が成立しない中でいったいどんな戦闘状況があり得るのかと問うた時に、まず浮かんだのが、テロリズム。オウム的な集団が生成してきた時に起こりうる内紛や内乱とか、クーデターだろうと思いました。それ以外のバトル・フィールドは想像できない。だけど僕は、この状況は、今後百年、二百年は続くと見ているんです。旧来の戦争という概念をもうしばらく曖昧に引きずりながらね。

福井
 自分の感覚だと、9.11以降の戦争のテロ化というのは、例えて言えば、今まで殴り合いのケンカで物事が片付いていたのが、陰湿なイジメに移行してしまった、というふうに見えるんです。
 学校の教室にアメリカというガキ大将がいたとします。根はそんなに悪い奴じゃないんだけど、とにかく俺がみんなをまとめていかなきゃって意識が強すぎて、言うことを聞かない奴がいると「秩序をみだすな」ってすぐにぶん殴る。でも最近では国際世論っていう先生がうるさいし、あんまり血を見るのは自分も嫌なんで、聞かない奴に対しては弁当隠したり、靴に画鋲入れたり(笑)、テロていうイジメで真綿で首を絞める方法を開発した。コロンビアの麻薬カルテルに仕掛けた不正規戦闘とか仮想敵国内の不満分子を焚きつけるってやり方です。
 ところがそのやり方を見てて、「なんだ、あれなら俺にもできるよ」と気がついた奴がいた。腕っ節では敵わないけど、こっそり嫌がらせなら俺もできるぞって。で、実行してみた。こうなるとアメリカも大慌てで、誰がやったかわからないけど、ここで黙ってたらなめられる。いままで散々殴ってきたから、いっぺん黙認すると、こういうイジメは延々と続くだろう、袋叩きにされるかもしれないってパニックになった。となったら、誰だかわかんないけど、怪しい奴を片っ端から殴っておくしかない。今後、同じ事をしたらどういう目に遭うかって事を教室中に知らしめるために、内心では「お前は違うんだよね」ってちょっと思いながらも、アフガンを思い切りブン殴らざるを得なかったのではないか、と例えますね。

福井
 ああいうような事件があると、これからは戦争の話は作りにくくなるんじやないかということが言われますが、自分は全然そうは思わないんです。むしろこれからやり甲斐がある時代が来るのではないかと。
 日本という、風土的にも政治的にもわりと特殊な位置づけの、こういう場所ならではの戦争ドラマや、そこから戦争抑止論にまで繋がっていけるような、自分にとってもやり甲斐のあるお話を、これから日本が一番作りやすい時代になるんじゃないかという予感があるんです。

富野
 僕もそう思っています。それこそ傍目八目でそれができるんじゃないのかな。問題なのは、日本人がそれをプラスに考えなさすぎるということですね。うまくすると、インテリジェンスを伴った、汎世界的な新しい歴史観が提示できるんじゃないかって思っています。


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