05/12/22-23:02
プロ論。2「Chapter5 誰もが注目する作品を生み出したいとき 富野由悠季」要約版:シャア専用ブログ
プロジェクト成功のコツは「異種格闘技」にあるんです
見てもバカにならないアニメを作りたかった
僕はもともと、好きでアニメの世界に入ったわけではなくて、大学卒業後、虫プロに入ったのも、食べるための選択でし
た。それでも、多くのヒット作を生み出せたわけですから、何らかの適性があったのでしょうね。
若い頃は、動く絵をいかに面白く見せるかに必死でしたが、10年経ったときに「子供向けロボットアニメ」を作り続ける
ことに不満を感じるようになったんです。「アニメばっかり見てたらバカになる」って思い始めたときに「機動戦士ガン
ダム」の制作話が持ち上がったんです。ガンダムにさまざまなメッセージをこめてテーマを持たせたのは、自戒だったん
ですよ。それが結果として、広い世代に受け入れられたんです。
当時、アニメだからって理由で、つじつまの合わないことをする大人の感覚にすごく抵抗感がありました。おもちゃ屋さ
んの手先にはしたくない。しかし、おもちゃ屋さんを否定もしない。その整合性をとるのは難しいことですが、僕は、ガ
ンダムの中で業界のタブーを次々と打ち破っていった。例えば、ガンダムを話の中で壊してしまったりね。おもちゃ屋さ
んがスポンサーの番組では、メーン商品を壊すのって、昔は許されなかったんですよ。常識を打ち破れば、あつれきは当
然出てきます。でも僕は、新しい手法を継続することでシステムを変えていきたかったんです。
今までのアニメ作品は、原作者が著作権を持っていたけど、ガンダムに関しては、ライセンス契約などできない状況でし
た。著作権でもめていたら、いいものは作れない、だったら一スタッフでいいと僕は考えたんです。
じゃあ僕にまったくロイヤリティが入ってこないかといえばそんなことはなくて、ガンダムがヒットすれば、お前のとこ
ろにも分けてやろうと紳士協定が結ばれたんです。しばらくして僕のところにもロイヤリティが入るようになったんです
が、パーセンテージは微々たるものでしたが、金額はかなりのものでした。なぜならガンダム市場が巨大化していたから
です。
著作権に固執しなかったことで、結果的にガンダムの世界も広がったし、自分へのリターンも増えた。新しい手法を導入
するときは、是か非かを論じるのではなくて、是にするにはどうしたらいいかと考えればうまくいくのです。
待ってるだけでは王子様はやってこない
異種格闘技とは「異なるものを取り入れて自分のものにアレンジしていく技」のこと。プロジェクトを成功させるために
は、「一見、違ったもの」を合わせていくことが大切なんです。違うジャンルのものを、今の業態に利用できないかと常
に考えることです。
アニメ業界には残念ながら、そういった考え方をする人が少ない。ですから僕は、若い頃からアニメ業界に染まらない努
力をしてきました。染まってしまうと仕事が小さくなってしまうんです。だから、その努力をしながら、映像作品を作る
ということだけを考えていました。
そうするうちに、仕事をするうえで最も大事なことは「原理原則を核とし、それを守り続けること」だと気づいたんです。
食品だったら、おいしいものを作ることだし、アニメだったら、動く絵で伝えられる面白さを追求すること。原理原則が
核にあれば、時代を超えて支持されるものを生み出せるってね。
皆さんも、自分の仕事の原理原則が何であるか常に意識していないと、単なる「作るのが好きな人」で終わってしまいま
すよ。それはプロではない。公共に向けたものに、趣味は発動してはならないのです。例えば、悦に入っているオヤジの
ラーメン店ってうまくないでしょ? 自分では悦に入ってるかもしれないけど、その悦を隠して客に提供するのがプロで
しょ。
もうひとつ、若い人に言っておきたいのは、思っているだけでは白馬の王子様は迎えに来てくれないということです。王
子様を待っている人は、自分が迎えに来てもらえるだけの人間かどうかを考えてみるといいでしょう。安定した会社に就
職し、切迫感もなく安穏と暮らしているままでは、40歳になったときに、そばにいる人からも嫌われるようになってしま
いますよ。みんなそうやって白馬の王子が迎えに来てくれない大人になってしまうんです。40歳まで大人としてかっこう
つけられるようになりたいなら、今は歯ぎしりするくらいつらい思いをして、勝ちたいと思いなさい。
僕はずっと負けたくないと思ってきました。ガンダムは社会現象になったけど、僕はその頃からアカデミー賞を取りたか
ったから、宮崎アニメに負けたことが悔しいんです。だけど「宮崎アニメとは戦う土壌が違うから」なんて言い訳は口が
裂けてもしたくない。「いろんな価値観があるから」なんて、大人が考えたごまかしです。ものすごく悔しい。それを味
わって逆に悔しいことを心底かみしめることができれば、そこそこまではいきますよ。
プロの哲学
原理原則を意識していないと、作るのが好きな人で終わる
Track Back URL: http://s03.2log.net/editor/tb.php?id=char:blog:950
Track Back