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CIRCUS 2005年6月号 逆襲の富野由悠季「大事なことはすべてガンダムから教わった・・・」:シャア専用ブログ
■CIRCUS 2005年6月号 逆襲の富野由悠季「大事なことはすべてガンダムから教わった・・・」
要約版
「富野はこんなもの」と思われるのは「嫌」じゃなく「損」だと思った
―――我々が夢中になって観た「機動戦士ガンダム」。その世界での13年後の、アムロとシャアを描いたのが「逆襲のシ
ャア」であった。若かった2人が成長し、まさに今の我々と同じ年齢になり、人間味をさらけ出す。では、両作品の
生みの親である富野由悠季にとっての「逆襲」とは? 男が敗北を認めないこと、諦めないこと、女と金、自身の
失敗について。まずは「男が負け惜しみをする、ということをどう思いますか?」という質問をぶつけてみた。
富野 男が負け惜しみをするのは、当たり前のことでは? 例えば、僕もずいぶん失敗してきたわけですよ。そもそも生
まれてきたこと自体、失敗なわけですよ(笑)。誰もが思うことで、もっと良い環境で生まれて育てば自分はもっ
とマシだったのでは、てね。でも失敗を感じるのはそうやって生かされているからであって、それはつまり成功な
んですよ。
僕が仕事を始めた当時なんて、TV漫画みたいな仕事をする連中は社会人として不適格者扱いで、僕はそれに対する
コンプレックスが強かった。だけど、そういう自分の気分に取り込まれて、発想したり、作ったりして、子供に観
せて、いいモノが作れるだろうか? 子供に観せるものであればあるほど、健やかでありたいと思った。要するに、
コンプレックスに固まっている人間の唯一の意地なんです。その意地を10年貫き通したら「ガンダム」みたいな、
おもちゃ屋の宣伝番組にすぎないものにも、物語性を付け加えるような仕事が出来たんです。また一過性の仕事は
したくないと思えるようになったんです。
「週ペースの消費モノ」「ものがまったくわかってないおチビちゃん向け」と、一瞬でも思ってしまっていたら、
今の僕はない。おチビちゃん向けでも、大人が観る機会だってあるし、仕事関係者も観るんです。「富野はこんな
もの」と思われるのは「嫌」じゃなく「損」なんです。その損得をもう少し踏み込んで考えたら、ON AIRが終わっ
た瞬間に忘れられるような作品は作りたくないし、10年後、20年後に残るようなモノを作れたらいいなと思ったわ
けです。だけど、週ペースじゃ上等なものが普通に作れるわけがない。でも上等じゃないにしても、最低限の条件
を満たすことを見つければいいと思って、僕はそれを見つける努力をしたんです。
そして、最低限の条件は、子供たちが観て、「えっ?」と思えるものを作ることだと思ったんです。つまり、単純
な勧善懲悪から脱して、敵側の感情や思考も入れて違った感じを出す。例えば正義の味方にやっつけられる怪獣1匹
とっても、その背後に、ただの「悪」では片付けられない悲哀や怨念、人間の罪深さを付け加えれば、リアルさが
出て、おチビちゃんたちが、いろいろ考えてくれたら素敵だなと思ったわけです。そのおチビちゃんたちが、10年
後、20年後にその感覚を持って、今度は自分のスキルとしてくれるのではないかとまで想像したんです。実際に今、
そういう人が結構いるのは嬉しいことですね。まあ、40代まではそういう切り口で仕事をしていました。
「こんなもんだ」って鬱屈して言い訳するのは、すごく簡単なこと
富野 僕もそうでしたが、30代から先の不安が見えた時、自分なりに何か頑張るその手立てを、それぞれの職場や生き方
の中で見つけられるような努力をするんだけど、それは自分でやるしかないのね。周りとしのぎを削っているわけ
だから。その中で周りの奴らよりも半歩前に出るためにはどうするか、ですよ。まったく同じなら半歩前には出ら
れないわけだから。
僕の仕事でいえば、TV漫画で世間に認められてないから、と鬱屈しようと思えば、いくらでも鬱屈できるし、努力
しないで済む理由は山ほどありました。だっておもちゃ屋さんの宣伝のロボットアニメだもの。「そんな中でいい
作品なんて作れるわけがない」って言い切れば済むんだし、現にそういうスタッフはたくさんいました。だけど僕
は、ロボット出しとけばいいのなら、その中にドラマを入れて、映画を作るような勉強させてもらえばいいとね。
それで、ON AIR観て、やっぱり俺は上手いなとか、下手だな、とかチェックするわけですよ。ギャラ貰いながら、
自分のスキル高めちゃうんだから、こんなおいしいことはない。自腹切ってそんな勉強なんて普通できないでしょ。
そういうふうに考えた瞬間に「おもちゃ屋の宣伝番組だから」「ロボットものなんてくだらない」っていう理由な
んてどこにもないわけ。
だから、例えば接客業でも、俺はブ男だからうまくできないといういい訳は誰でも思いつくわけです。でもそれは
努力したくない言い訳なんですよ。接客業は基本的に人柄なんだから、人柄が良くチャーミングに見せる自分を作
っていけば、「あいつはブ男だけど、とてもいろんなことに気がつくし、実はおネエちゃんじゃなくて、あいつが
いるから行くんだ」って言われるキャバレーやストリップの支配人になることだって可能なわけです。問題なのは
「俺はブ男だからダメなんだ」と思うこと、「こんな仕事についたからダメなんだ」というコンプレックスで鬱屈
しちゃうことなんですよ。それはものの考え方ではなくて、それ以前の問題だと思う。
つまり、自分の可能性、努力することを基本的に回避しているいう気がしてしょうがない。それを回避せずに、自
分の対面している物事の中で一番求められていることは何だろうかと、自分なりに探し出して、それを実践するこ
とを5年なり10年なりやり続ければいい。そうすれば、今の自分以上の自分に間違いなくなっていますよ。
話は変わりますが、異性を美化し過ぎるのはおやめなさいというのを、おチビちゃんにも「ガンダム」を通じてき
ちんと投げ与えていきたいというのがありました。美化してはいけない、でもオスとメスがいることはいいことな
んだよ、というメッセージを絶えず送る努力はしてきました。その話をしたうえで、僕から見た女性というのはど
うなの?といえば、ものすごく簡単で、いいものなんだから、いい人と出会いなさい、いい人と出会うにはいい男
になりなさい。ただ、それだけのことです。
Ζガンダムは気分を変えて作ったら、明るい作品になりました
富野 僕自身お見合い結婚なんだけど、結婚に関しては恋愛結婚より見合い結婚の方がいい。なぜかというと、まずそこ
に「自分の好み」が入らないから。あいだに紹介者がいれば、そいつの目線、人物査定で2人を引き合わすわけで、
見合い相手が自分から見て「この程度の女か」っていう場合、この程度の女を紹介される自分は「この程度の男」
っていう評価なのよ。
僕の場合、アニメの職場に入った時に「絶対、職場結婚はしない」と決めました。忙しい職場だから、迂闊に手の
届く場所にいる女に手を伸ばしたくなるでしょ? 幸い、僕は大学時代の同期が、いい奥さんを紹介してくれたん
だけど、同時に紹介者が自分をどう評価してるのかもわかるわけですよ。
だから、見合いにいくまでのプロセスを3、4回踏むのは、いい経験になると思う。すぐ捕まるネエちゃんで満足し
ていたら成長しない。何回か手を伸ばさないと届かない女を狙えば、必然的に女を落とすための努力をするでしょ。
それが重要なんです。
僕はね、ガンダムに関しては、一切原作権を持っていないんです。全部買い取りの仕事なんです。もう少し執着し
ていれば、プロダクションを持てたかもしれない。その執着を持たなかった意味で、仕事師としては敗残者だな、
と思います。ルーカスプロみたいに何十億ものお金を動かせたらな、と思うことはありますし、それを思うともの
すごく悔しいですよ。でも、それをしなかったからこそ、僕は60代になっても、仕事を作らせてもらえるポジショ
ンにいられるのかもしれない。まあこう強がってみるのも、倒産する悲劇がなかったからなんだけどね。
そして、最初にお話したように、生まれたことが不幸だし、成功なんだ、ということをそのまま受け止めたらどう
なるかと思いながら、「Ζガンダム」の主人公を追って作っていたら、事件の展開は何ひとつ変わらないのに、最
後に主人公の行き着くところはまったく逆になった。これには自分でもびっくりしました。僕の中では名作になり
ましたよ。この映画では新しい発見があり、お話できるものをたくさん手に入れられた。だから今日、ここでいろ
んな話ができるんでしょ?
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