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05/06/26-23:53

ROCKIN'ON JAPAN2005年6月号 富野由悠季インタビュー:シャア専用ブログ

■ROCKIN'ON JAPAN2005年6月号 富野由悠季インタビュー
―― かつて富野さんは「Ζ」のような絶望的な作品を作ったことを後悔していると語っていて、「Ζ」ファンの一人としてその言葉に非
   常にショックを受けたんですが。今回はどうしてその「Ζ」を映画化する気持ちになったんですか?

富野 一つには自分が歳をとったから、人生に対する見方が変わったというのがあります。それとここ10年くらい、自分自身も袋小路に入
   ってしまうような気持ちになることが多くて、そこから脱出するためにどうすればいいのかと考えていたから「Ζ」のような作品の
   作り方は良くなかったという記憶が大きくなっていったんです。当時TV版の「Ζ」を作ってるときの裏テーマは「お前らアニメばっ
   かり見てたらバカになるぞ!」ってことで、その背景にはファースト・ガンダムの二番煎じの企画をやらされて「ガンダム以降に作
   った作品では、ガンダム以上の結果が出なかったから、お前はそれをやれ」って言われたこと自分に対する憤りもあったわけです。

   そういう現実に対処していく大人として物事を見ていけば「アニメ万歳!」みたいなところでものを作っていったってロクなものは
   できないだろうと思った。ならば違うものを入れていくことでアンチテーゼを作っていこうとしたわけです。だけど、主人公が狂っ
   ていくというところでその物語のピリオドを打ったということが、その後の自分にとってものすごく気持ち悪くて、辛かったんです
   よ。まあ当時の自分は「現実認知の物語なんだから、わかりにくかったってしょうがないんだよ!」とか「カミーユみたいな少年が
   いきなりあんなふうに戦場に放りこまれたら、こうなるのは当たり前じゃないか!」とか言い切っていました。

   それが時代に対してや正義に対してのアンチテーゼになっていたのは事実だから、確かにそれはそれでよかったんだろう。でも気持
   ちの悪さっていうのはどうしても拭いきれなくて、自分の中ではイヤな作品だとも言ったし、作ってから10年は忘れる努力もしたし
   それで見事に忘れてもいったんです。だから去年初めて見返してみたとき「え!こんなに面白い作品だったのか!」って驚きました
   よ。

―― なるほどねぇ。でもあのラストの気持ち悪さは変わらなかった、ということですね。

富野 だって「Ζ」のような作品だって数万人の人が見るわけじゃないですか。それを考えると、このままにはしておけないって思うんで
   すよ。「アニメばっかり見てたらバカになるぞ!」って言っていたことが20年経って、もう現実になってしまってるじゃないですか
   オウム以降の社会状況だったり、若い連中の犯罪だったり、文部科学省のゆとり教育の失敗だったり、もう世の中みんなカミーユみ
   たいになっちゃってるんだから、その傷口に塩をこすりつけるような作品にはしたくなかったんです。ちょっとだけ前向きに物事を
   見ることができたら、カミーユは狂わなかったかもしれないって考えたら、この作品を作り直す意味があるって思ったんです。

―― ということは、自分のようなオリジナル「Ζ」のファンは、今回の映画版3部作の新しいラストに失望するかもしれませんよね。

富野 そう。失望させるかもしれない。でも、あなたのように「Ζには衝撃を受けたんだよね」って世代がいるのはわかるんです。でも、
   その世代が果たして今ちゃんと生きていけてるのだろうかってことを考えるんですよ。もしカミーユがあのまま一般の社会に出たら
   まちがいなく潰れてるじゃないですか。でも、あのカミーユに共感してた少年が現在こうしてあなたのように生きてるよね? そし
   て、あんなふうに潰れたくはないでしょ? 第二のカミーユになるだけの勇気があなたにはある? ないでしょ? 「だったらどう
   する?」っていう物語は、僕は20年後だったらやってもいいと思ったわけです。だって「Ζ」のままの自分でいたら、お前らもう死
   んでるぞっての辛いでしょ? 家族も家庭ももてないぞって。ロボットアニメ見て一緒に落ち込んでるようじゃダメでしょう?
―― でも僕自身、ここ数年落ち込んでるときにはいつも「Ζ」のDVDを見直したりしてるんですけど。

富野 そういうのはやめなさい!

―― はい!

富野 あのね、カミーユは20年前の自分だったんです。「ガンダム」以上の作品が作れないってことで本当に落ち込んでいて、それもこれ
   から生き延びるにはどうするかってことを考えながらも、おめおめと周りの奴らの言うことを聞くのも嫌だって作ったのが「Ζ」だ
   ったんです。でも、そういうのはエンターテイメントを提供する立場からすると根性が曲がり過ぎてたんですよ。

―― いや、でもその曲がった根性に痺れたんですよ。

富野 確かにそういうものに共感する年代っていうのはある。でもそういうのはね、16歳や17歳までに済ますことでしょう。少し大きくな
   ったら、まっとうな大人になるってどういうことか自分で考えなければならないし、それが大人ってものでしょ?

―― はい!

富野 文芸でも映画でも音楽でもそうですけど、鬱屈感を表現している作品、自分の憂さを代弁してくれてる作品っていうのが評価される
   傾向があるじゃないですか。僕はね、そういうのは、人が病気になることを応援しているような気がしてしょうがないのよ。少なく
   とも公共に提供する作品を作る人間としては、それはあってはならないって思うようになったんです。だからね、今回の「Ζ」は確
   かに期待を裏切りますよ。でも、裏切ったときに絶対に腹を立たせないという自信はあります。

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