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05/06/27-22:29

オトナファミ第2号 富野由悠季がもう一度「Ζガンダム」を作った理由 インタビュー要約版:シャア専用ブログ

■オトナファミ第2号 富野由悠季がもう一度「Ζガンダム」を作った理由 インタビュー要約版

 20年前の「Ζ」そして今年の「Ζ」

 ―――公開から約1ヵ月経過しましたが、なぜ「Ζ」をいまの時代に蘇らせようと思ったのですか?

 富野 時代性から。映画化の話は10年前にもあったが、ダイジェスト版をまとめるという二次使用のビジネスを展開す
るのが嫌で作り直すモチベーションがわかなかった。

    それが変わったのは9.11テロ事件が起こったから。あの景色は、21世紀の近代の英知が、地球をひとつの連合体
    として統治する能力を基本的に持っていない、と異議を申し立てる景色だった。ここまで周到に準備された意思
    の凄まじさというのは見過ごせない。見過ごせない凄まじさだから、アメリカ合衆国がフセインを叩くに至る感
    情論はよくわかる。わかるけれども、それで21世紀の道が開けるかといったら、当然、突破できない。

    かなりの人が反撃の手を挙げてしまったこの状況はガンダム的には「オールドタイプのロジックが全部復活して
    しまったな。たまらないな」という状況で「逆襲のシャア」みたい。それで済むわけないのを我々は現在進行形
    で見せつけられている。
    
    TV版のティターンズの反乱は、いま思えばテロ行為。それがついに現実となってしまった。ロボットアニメとい
    う枠のなかで、現実に対してもう一度メッセージを必要があると思った。そのためにはエンターテイメントに仕
    上げればいいというカンが働いた。

 人は変われるのか――メッセージの変質

 ―――第1章を観て、監督の「Ζ」に対する視線が優しくなったのでは、と感じたのですが。

 富野 それは違う。映画は娯楽作品だという覚悟ができただけ。作り手の余分な気分は入れず、カメラは人物に寄り添
    っている。俯瞰して見るような堅さがなくなったから、柔らかく優しく見えるだけ。キャラクターについていく
    というところにやっと着地できた。

 ―――僕はじつはTV版の「Ζ」があまり好きではなかったのですが。
 
 富野 僕も大嫌いだったし、全話見直せるようになったのは2年ほど前から。TV版のほうがいいという意見があるのも知
    っている。現実は自分の思い通りになることは何ひとつない、ということを示しているからだろう。

    第1章からはTV版の重苦しさのテイストが消えた。現実で苦労している僕らに対して「ちょっと見方を変えたら、
    ひょっとしたらもう少し生き延びられるかもしれないよ」というメッセージを挿入できるだろうと考えた。人間
    は本質的には変わらない。じゃあどうするかといえば、自己研鑽しかない。

 ゴジラ、ガンダム、萌え――富野演出論の構築

 ―――富野監督はMSやメカが登場する作品を多く描きながらも、その性能を中心に据えた話は見当たりません。機械よ
    りもむしろ人間にしか興味がない、と捉えていいのでしょうか。
 
 富野 映画という媒体で表現されている劇のキモは、究極、人間関係しかない。一般人もオタクも突き詰めれば一番興
    味が湧くのは人間作られたモノに対しての共感性は姫路城、タージ・マハール、エッフェル塔などのよほど素晴
    らしい建造物でないと起きない。

 ―――では、機械はお嫌いで?

 富野 いえ。小学校5、6年から空想科学映画を好んで観ていた。でも5年生のときに観た映画「怪人二十面相」で銀座に
    ロボットが出てくるのを観て「なんて子供向けの映画はチャチなんだろうか」かと思った。あまりにも子供だま
    しの描き方で、敵である犯人までが子供のレベルで行動している。尾行されているのに、その子供を待っていた
    り。それはヒドイだろうと、子供でも思うでしょ?

 ―――そうですね。それでも映画は観続けたのですか?

 富野 高校1年のとき映画「禁断の惑星」を観たが、なんてつまらないんだと思った。ファッションやデザイン、あらゆ
    るものがチャチだった。でもSF的な核だけはハイブロウだった。それで空想科学映画が好きだっていってるよう
    なやつは演劇的、人間関係的なドラマを作るのがまったく不得手なんだとわかった。
    
    それから3年間は小説の勉強。ひたすら小説を書いていた。そこから入らない限り「ゴジラ」さえ作れないだろう
    と考えた。ゴジラとその足元にいる人間のドラマが無関係なのは許せない。ゴジラは勝手に出て、人間はゴジラ
    に関係なく、勝手に恋愛話をやっている。恋愛話をするなら、ゴジラを真ん中に挟んで男女を置いて、ゴジラに
    よって愛が引き裂かれたけれど、ゴジラを倒したことで愛が成就するというのが正しい。

 ―――そういう考え方が「ザンボット3」に向かったのですか?

 富野 そうです。それがガンダムまで続いている。ガンダムが僕にとってのゴジラ。ゴジラをガンダムとするなら、キ
    ャラクターを乗せるしかない。そうしないとガンダムは物語に関係のないアイテムになる。幸いガンダムが人型
    であるおかげで、ケースによっては感情の表現もできるかもしれないという考えもあって、それを利用した。

    その前提があってMSに人間の関係性がついてくるなら、今度は「人型兵器を出していい戦争物語はなにか?」と
    考えた。あとはハードを固めればいいだけで、宇宙戦争と決まれば、MSの動力源なんて、映画としてのスペクタ
    クルを構成するパーツとして利用すればいいんだから考えなかった。しょせん視覚的に転化された記号論として
    のリアルなんだから、本物である必要はない。

 ―――画面の中にリアルを、人生を、恋愛を感じる人もいます。昨今蔓延する"萌え"について、どう感じます?

 富野 “萌え”という言葉が聞こえ始めた当初は嫌だったが、セクシャリティを感じる入り口としては、極めて当然と
    思い始めた。秋葉原の喫茶店のコスプレサービスも当たり前だと思う。むしろこういう時代を経てからじゃない
    と、思いつけなかったほど、日本人のアミューズメント、エンターテイメントのセンスが硬直していただけ。
    
    敗戦後、日本の男性は、生活習慣の中にあった性的なものをかなぐり捨て、セクシャリティに対してストイック
    過ぎた。色気という言葉を圧殺し、サービス業としての節度と規範をあいまいにしたから、中間がなくなり、清
    廉潔白かセクハラかの両極端になってしまった。
    
    萌えは肯定的に捉えていいが、伝統がないため稚拙。もっと洗練されて欲しい。日常生活の中で、少女を監禁し
    て、犬の首輪をつけるなんて、本当に僕は許せない。一方的な従属関係はおかしい。でもこちらも選ぶし、女の
    子も選んだうえならありうるかもしれない。
    
    そういう関係から匂うセクシャリティは萌えの先にある何かだし、そこで問われるのはセンス。何よりそのバラ
    ンスの取れた緊張関係の手本を、大人がちゃんと示していれば、それを次の世代が覚える。なのに戦後、我々の
    世代がそういうものをきちんと見せなかったから、いまの子たちは、両極端に走ってしまったのでは、という反
    省が強い。

    レコアとシャアの「お尻を触られてたの」「違うぞ」というセリフ。無関係の第三者のカミーユが「ハイ!」っ
    て返事するんだけど、せめてお前ら、これぐらいの関係は結べるだろう、ってこと。

 劇場版「Ζ」、第2、3章は? 100年残る映画になる!

 ―――監督にとって「Ζ」とはどういう話なのでしょうか?
 
 富野 今回はまったく違うがまだ言えない。なぜなら劇場版が終わってないから。1章に限るなら“一期一会”の物語。
    もう一度旧交を温めよう、温められるかもしれない。そういう可能性を秘めているから、一度袖をすり合わせた
    仲は、あんまり無碍にしてはいけませんよ、ということ。

 ―――2章、3章での、ストーリー上の変更はありますか?

 富野 大きなドラマのうねりは変わっていない。芯にある物語と戦局は変えようがない。2章に関しては、アフレコも終
    わっているし、あとはダビングだけですから、かな輪郭が見える。3章は見え切っていないが「人は本質的には変
    わらないかもしれない。変わらないかもしれないからこそ、最終的に3章を観てください」といえるまとめかたを
    している。

    いちばん包括的で、みんなが了解できるような着地点を「Ζ」なりに見つけたということが「Ζ」3部作全体にい
    えること。それこそを古いファンに観て頂きたいし、ガンダムの名前しか知らない程度の方には「一度覗いて観
    て頂けませんか? これはこれできっと面白く観て頂けるのでは?」とおすすめできる話にしたつもり。

 ―――では、最後に2章と3章の境界線はどこでしょうか?

 富野 そんなこと口が裂けても言えない。それを見せるために映画作ってるんだから(笑)。

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